2010年7月26日月曜日

あした

きみと一緒に暮らすようになって
今日で二ヶ月。

初めのころにくらべたら、
きみも私も、ずいぶんとお互いの存在に慣れてきたような気がしている
私はきみという存在がいつもいることがあたりまえになってきたし、
きみもきっとそう。

きみの顔を見ているのがとても好きだ。
笑った顔が一番好きだけれど。
嘘泣きの甘え泣きの顔も捨てがたい。
顔を真っ赤にしてわんわん泣いているととても可哀相、だけど、初めのころと違って、泣いているきみを見ていると余計に愛おしさが募る。
なにかに夢中になって、瞬きもせずにじっと見つめている顔も好き。

眠っている顔も愛しい。
思わずきみの唇にキスをしたくなる。
そっと顔をよせると、胸がどきどきと音を立てる。
それから、我慢してほっぺたにキスをする。
ファーストキスはとっておいてあげよう、いつか出会うだろう、きみの一番大切なひとのために。

眠っている顔も好きだけれど。
早く起きてくれないかな。
明日の朝、またきみに会えるのがとても楽しみ。

明日がこんなに待ち遠しいなんて。
これもきみがくれた宝物。

2010年7月25日日曜日

誕生


母が買ってきてくれたハイビスカス。
母が帰ってからも、何度も花を咲かせる。

また綺麗な花が咲いた。

窓から眺める。
たくさんの部屋の灯り。
部屋の数よりももっとたくさんの人。
たくさんの人の数だけ、父がいて、母がいる。

誰でも、昔はこどもだった。
親のいない人はひとりもいない。

父と母がいて、私が生まれた。
君が生まれた。

2010年7月18日日曜日

進化

午前5時

午後7時、富士の影

日々、変わっていく君。

私の洋服をぎゅっと掴むようになった
あやしたら笑うようになった
おなかがいっぱいになったら哺乳瓶を吐き出すようになった
すこしずつ一人で遊べるようになってきて、目が覚めているのに私を呼ばなくなった

君のおかげで変わっていく私。

君の泣き声で、おなかが減ったのか寂しいだけなのか、なんとなく分かるようになった
どうすれば君が笑うのか、たぶん、すこしだけ分かるようになった
だいたいどれくらいミルクを足せばいいのか分かるようになってきた

君が進化する。
ついていこうと私も必死。

進化する君、君はいつも懸命だ。
だから、私は、君から目を離せない。

ほんのすこし目を離したすきに。
君はもう進化している。

そして私の君への愛も、日々、進化していく。
君の進化の速度よりも速く、君の進化の深度よりも深く。

2010年7月14日水曜日

遠い道のり


人の夢と書いて儚いって、
誰が考えたんだろう

おさないときに夢見ていたこと
おとなになってから描いた夢

叶いそうだと思っていたけれど、叶わない
叶えたいと思っていたけれど、叶わない
叶えばいいなと願っていたけれど、やっぱり叶わない

どうして夢なんて見てしまうんだろう
でも
夢見ることをしなければ、人生はあまりにも長く退屈なものになってしまうかもしれない

人生は砕けた夢の欠片が集まって出来ているのかも

母親製造工程

午後6時25分
おかあさんがどうしてあんなに心配症なのか。
わかった。

ミルクは足りてる?
すこし部屋が暑いのかな?
眠れなくてぐずってるの?
おむつが汚れているのかしら?
寂しいの?
遊びたいの?

赤ちゃんは泣くことでした意志を伝えられない。
ただ、泣くだけ。

だからお母さんは、あれかな?これかな?って心配する。
心配して、あれこれ世話を焼いてみる。
おむつを替えてみたり。
ミルクをあげてみたり。
抱っこしてとんとんしてみたり。
それでも泣き止まなくて途方にくれたり。

だから、おかあさんは。
きみが大人になってからも、心配ばっかりするんだ。
大人になったきみは、いつの間にか親になにも言わなくなってしまうから。
赤ちゃんのときは泣くだけで、大人になったら自分だけの世界を持って。
きみがどうしたいのか、なにを思っているのか。
わからないから、おかあさんはひたすら心配する。
むかし、きみが赤ちゃんだったときに、そうしていたように。

ご飯ちゃんと食べてるの?
あなたは風邪を引きやすいんだから気をつけなさい。
そんなに気を使わなくても、大丈夫よ、誰でもそんなものなんだから。
自分のことを一番に考えなさい。

そうやって、おかあさんは作られていくんだね。

2010年7月10日土曜日

しなくてもいいこと

午前五時

朝まだき

焦らなくていい
走り続けなくていい
自分を責めなくていい
誰かと比較しなくていい
いつもいつも強くなくっていい

世の中にはしなくていいことがたくさんある

無理しなくていい

無理して守れるものと、無理して失くしてしまうもの
たぶん、無理して失ってしまうもののほうが、本当は大切なもの

2010年7月8日木曜日

尊いもの

午前8時


午後6時


母の置き土産、ハイビスカスがまた花をつけた


むかし、私は自由だった
自分のことだけを考えて生きていればよかった
自分の好きなことに夢中になって生きていてよかった
自分の生活があり、自分の生き方があり、自分を自立した人間だと思い込んでいた

いま、君に出会って
いままでの私はなんてこどもだったんだろうと思った

自分の好きなことをする時間なんてない
すべてきみに振り回されっぱなし
まったなし、先の読めないきみとの生活
そして、そのことに不満を感じたりする余裕さえない

きみとふたり
必死に一時間一時間を過ごしていて
なりふり構わず
食事をとるのも忘れて
背中や腕の痛みも忘れて

自分よりも大切なものが出来て、自分よりも守りたいものが出来て、すべてが不自由になった
だけど
むかしの私に還りたいとは思わない
「生きる」ことの本当の意味を、きみに出会って知ったような気がする

2010年7月7日水曜日

いのち

君とふたりきりで、ちいさな部屋にいる
静か過ぎて
時々怖くなって
眠っている君の寝息を確かめて安心する

ちいさな鼻
ちいさな口

かざした私の手にふれる吐息はあまりにもちいさくて
思わず、寝ている君の足をつつく

ぴくん、と動く

安心する
そして、寂しくなる
早く起きてくれないかな

起きたらまたたくさん泣いて、たくさん抱っこをせがまれて、疲れてしまうのに
君が眠っていると、とても寂しい

2010年7月5日月曜日

35日間

過ぎてしまえば瞬く間の35日間だった。

毎日、一緒にいた。
一緒にテレビを観て、一緒にお昼寝をし、一緒にご飯を食べ、一緒に夜空を眺めた。

母と、こんな風に過ごしたことが今まであったかな。
母はずっと夜働いている人だったので。
私が起きたときには母は寝ていたし。
私が学校から帰ると母は仕事をしていた。

この35日間、母はいつでもキッチンカウンターの向こうにいた。
視線を上げればいつでも母の姿があった。
私のためにご飯を作ってくれている母の姿があった。

洗濯をしていると、母が買ってきた洗濯ばさみが置いてあった。
掃除をしていると、母がおろした雑巾があった。
料理をしていると、母が買ってきたお玉があった。

そこここに、母が35日間暮らしていた名残りがある。
だけど、母の笑顔はどこにもない。

35日間があまりにも幸せだったので。
今、すこし寂しい。