2009年11月16日月曜日

母上様。


母が漬けたらっきょうが一瓶。
これまで食べたどんならっきょうよりも美味である。
いくつでも食べられる、気がつけば一瓶なんてあっという間になくなってしまいそうなくらい美味しい。

だけど。
実は母が漬けたらっきょうを食べるのは、もしかしたらこれが初めてかもしれない。

母は料理が苦手な人だった。
だから、食卓にのぼるらっきょうや白菜漬け、それから梅酒などは、父の母や、母の母が作ったものだった。
最初に、父の母が亡くなった。
父と母は、結婚して最初の1、2年を除いてはずっと、父の母と暮らしていた。
母はこれ幸いとばかりに、料理はほとんどこの父の母に任せきりだったので、らっきょうや梅酒は父の母が漬けたものだった。
また、母の母も料理がとても上手な人で、ことに白菜漬けや十六寸を甘く煮たものなどは私の大好物で、田舎に帰る度に山盛りいっぱい持たせてくれた。
その母の母も、病気で身体の自由がきかなくなり、母に美味しい白菜漬けや十六寸を持たせてくれる人はいなくなった。

それから何年か経って。
実家に帰ると、母は、父の母が使っていた大きな梅酒の瓶を使って、梅酒を造っていた。
甘いお酒は嫌いだと言っていた母が、自分で漬けた梅酒を振舞ってくれた。
それから、今年。
実家に帰ったときに、母はらっきょうをつけていた。
誰に教わったのだろう。
父の母が元気なときも、母の母が元気なときも一切漬けたことがなかった母なのに。
甘酸っぱいらっきょうはいくつ食べても飽きることがなく、すこし酸味のきいた浅漬けの白菜はとても美味しかった。

甘えたの母は。
父の母や、母の母が元気なときは、もっぱら食べる側だった。
母に似たものぐさな私は。
母がいなくなったあとに、らっきょうや白菜を漬けるようになるのだろうか。
出来ればそれまでに、母にこの美味しいらっきょうの漬け方を教わっておきたい。
でも母のことだからきっと。
ぜんぶ目分量だからよくわからないのよ、と、笑って答えるに違いない。

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