2009年10月20日火曜日

電線の空。


気持ちのよい秋晴れの朝。
ふと空を見上げた。
私の目線をたくさんの電線が横切った。
これが、私の空。

電柱を地下に埋めるのだと。
はじめに聞いたときは、なんて馬鹿馬鹿しいのだろうと思った。
そのころの私の空は、遮るものひとつない、広い広い空だったから。

でもあれから何年経っても、電柱は地下深くには埋まらず、我が物顔で地上を占拠している。
そして今、私の目線にはたくさんの電線。

200年の昔、1000年の昔。
昔の人達が見た空はきっとこんなではなかっただろう。

だけど電柱が地中深く姿を隠すようなときがもし本当に来たとしても。
その空は、200年前の空ではなく、1000年昔の空でもない。

この電線は、わたし達のライフライン。
人類の進歩の証、わたし達の日常の標(しるし)。
たしかに視線を遮って、たしかに広々とした空を断絶してしまうけれど、でも。

わたし達がこれまで歩んできた道のりのひとつの証がこの電線なのだとしたら。
いつかこの電線が消えてなくなることもまた、わたし達が歩んでゆく道のり。

世界はどんな風に変わっていくのだろう。
たとえ線が消えても遠い昔とは異なった風景が広がる、50年先、100年先、その先のもっと未来は、いったいどんなカタチをしているのだろうか。

そのカタチを見てみたい。
ふと、そんなことを思った秋の空。

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